マダニとは
マダニは8本足からなる節足動物で、クモやサソリに近い虫です。
吸血前で3~4mm程度の大きさで吸血後は1cmほどになり、重さは吸血前と比べて数十倍になることもあります。
マダニは日本全国に生息し、40種類以上います。
屋内にいるダニとは異なり、森林や草むらなどの野外で見られ、春から秋にかけて活発になりますので、特に夏の行楽シーズンには十分注意しましょう。
マダニは草や木に潜み、そばに通りがかった哺乳類に飛び移れる機会を狙っています。
そして、ハラー氏器官と呼ばれる独特の感覚器官で、哺乳類の体温、振動、二酸化炭素などを感知し、体表へ寄生します。
マダニの唯一の栄養源は、哺乳類の血液です。その吸血の際に、原虫やウイルス、リケッチア、細菌などさまざまな病原体の媒介者となることがあります。
マダニはオスもメスも吸血します。血を吸うときは、セメントのようなもので自分の口を固定し、吸血します。
成ダニになると固定した状態で、約1週間もの期間、血を吸い続けます。
血を吸ったマダニはパンパンに膨れ上がり、吸血が終わると皮膚から剥がれ落ち、草むらや砂地などで2~3000個と大量の卵を産みます。
マダニが引き起こす、人間と犬の共通感染症
(1)重症熱性血小板減少症候群【SFTS】
マダニ媒介性の新しい感染症で、Severe Fever with Thrombocytopenia Syndromeの頭文字をとり略してSFTSとされています。血液の中の血小板が破壊され、白血球が減少してしまいます。
人の症状→マダニに噛まれてから1~2週間程度で「発熱」「倦怠感」「食欲低下」「頭痛」「筋肉痛」「下痢」などの消化器官症状があらわれます。
主な症状は発熱と消化器官症状で、重症化、死に至ることもあります。
犬の症状→無症状
(2)日本紅斑熱
感染した時の症状は、かゆみのない発疹や発熱がある。放っておくと最終的には高熱を発します。
治療は点滴と抗生物質の投与。この菌を持ったマダニに噛まれることによって感染します。
人の症状→潜伏期間は2~8日程度で、頭痛、高熱、倦怠感、筋肉痛、出血、発疹
犬の症状→無症状
(3)ライ
ノネズミや鹿、野鳥などを保菌動物とし、マダニに媒介されるスピロヘータの一種、ボレリアの感染によって引き起こされます。
人の症状→潜伏期間は数日から数週間程度で遊歩性紅斑、リンパ節腫脹、関節炎、神経症状、循環器症状
犬の症状→発熱や食欲不振、全身性痙攣、関節炎など
(4)バベシア
マダニによって媒介されるバベシアという原虫によって引き起こされる溶血性の疾病です。赤血球に病原菌が寄生し、発熱および溶血性貧血を起こします。
人の症状→急性では、溶血性貧血、血尿、溶血による貧血のため歯茎、舌などが白くなる、脾臓の肥大、黄疸、リンパ節障害、嘔吐などがあります。
犬の症状→溶血性貧血、発熱、黄疸、元気消失など、症状が重い場合は急死することもあります。
(5)ダニ媒介性脳炎
日本脳炎と同じフラビウイルス属のウイルスによって引き起こされる感染症です。ロシア春夏脳炎ウイルスと中部ヨーロッパ脳炎ウイルスがあります。
人の症状→急性脳炎、インフルエンザ様の発熱、頭痛、筋肉痛。極期には精神錯乱・昏睡・痙攣および麻痺などの脳炎症状が出現することもあります。
犬の症状→神経症状は単なる震えから痙攣や死亡にまで及ぶこともあります。
(6)野兎病
野兎病菌は極めて感染力が強い菌であり、数個から100個という、ごく少数の菌と接触しただけで感染が成立します。
急性発熱疾患。生物兵器に用いられます。
人の症状→突然の波状熱、頭痛、悪寒、吐き気、嘔吐、衰弱、化膿、潰瘍の発生。
犬の症状→発熱、運動失調、下痢、流産などを示し、幼弱の場合では死亡してしまうこともあります。
(7)熱
治療が遅れると死に至るうえ、一度でも重症化すると治っても予後はよくありません。マダニ以外の感染経路もあります。
人の症状→インフルエンザに似た高熱や呼吸器症状、肺炎など。慢性の場合は疲労感、慢性肝炎、心筋炎など、うつ病などの精神的な疾患と間違われることもあります。
犬の症状→不顕性感染。軽い発熱や流産・不妊症などが見られます。
(8)エールリヒア症
人の症状→犬に寄生するエールリヒア・カニスは人には感染性は示しません。
犬の症状→エールリヒア8~20日間の潜伏期間後に、急性期には間欠熱、リンパ節腫脹、脾腫、肝腫大、鼻血などの出血、体重減少などを示します。
慢性期には、網膜出血、前眼房出血、および前または後ブドウ膜炎や、発熱、血球減少症に続発する骨髄増生などの症状が見られます。
マダニ対策
マダニに噛まれない服装をすることが重要です。野外では、腕、足、首など、肌の露出を少なくするようにしましょう。
*首にはタオルを巻くか、ハイネックの洋服を着用しましょう。
*シャツの袖口は絞って、裾はズボンの中に入れましょう。
*ズボンの裾は靴下もしくは長靴等の中に入れましょう。
愛犬・愛猫のマダニ予防
外に出たり、散歩に行くときはマダニ忌避効果のある成分を含むスプレーや首輪をつけてマダニが付きにくくなるよう予防しましょう。
マダニに噛まれていないかチェックをする
マダニのいそうなところから帰宅したら、衣類や体にマダニが付いていないかよく確認しましょう。
入浴やシャワーで洗い流すことも有効です。着用していた衣類も速やかに洗濯することで家の中にマダニを持ち込むことも防ぐことができます。
また、愛犬、愛猫が外から帰ってきたら、マダニに噛まれていないかブラッシングなどをして確認しましょう。
特に寄生されやすい目の縁、耳の付け根、頬、肩、前足などはよく確認しましょう。
もしマダニに噛まれたら
手で取ると病気がうつることもあります。
マダニを見つけたときは、すでに吸血し大きくなっているはずです。大事な愛犬、愛猫にマダニが付いていたら、かわいそうと思って手で取ってしまいそうですが、無理に手で引っ張るとマダニの口が残って皮膚が炎症を起こしたり、血が逆流して病原体が移ったりします。
マダニをすぐに取りたい場合は専用の器具で取り除くか、獣医さんに相談することをお勧めします。
人の場合でも同様で、マダニに噛まれていることに気づいたら、最寄りの皮膚科や外科を受診し、除去してもらいましょう。